ギャンブル依存症をとりまく現状と対策を学ぶ

右上:田中紀子さん(ギャンブル依存症問題を考える会・代表)は、私たちの質問にも丁寧に答えてくださいました。

1月7日、生活クラブ運動グループ・横浜未来アクション主催(ネット青葉協力)“依存症支援現場の声を聴く”オンラインフォーラムが開催されました。

講師に、田中紀子さん(公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会・代表)を迎え、当事者としての経験談も交えながら、依存症患者とそのご家族への支援活動や、国や自治体による依存症対策の現状などについてお話を伺いました。

依存症を知る
まず、依存症に陥る背景として、過去のいじめ体験や親からの過度な期待・虐待、職場でのストレス、人生における挫折や喪失感、そしてもともと抱えている発達障害や、ギャンブルの習慣化などが挙げられました。
特に、人生の谷とも言える時期に依存症に陥りやすく、その辛さを忘れるためにギャンブルにのめり込んでしまう傾向があるそうです。自身に絶望し、自分で自分を見捨ててしまう状態で、もともと抱えている悪感情と、依存症で抱えてしまった悪感情の、二重の悪感情を忘れる手段として、ギャンブル依存症へ陥ってしまうと言います。

依存症になると、脳内の快楽物質の伝達が機能不全に陥り、日常生活での快楽が得られづらくなるために、苦痛の緩和を図るために、手軽に受けられるインスタントな刺激(ギャンブル・買い物・飲酒など)を求めてしまうのだそう。
また、近年の依存症患者の傾向として、公営競技(競馬・競輪・ボート/オートレースなど)によるCM動画や、ネット投票が普及したことにより、20代~50代など若い世代に増加が見られ、中には10代のスマホゲーム課金によるものも含まれるそうです。
ネット投票はオンラインで購入することができ、本人や家族が上限制限や利用停止を求めても、使用口座を変えればまた好きなだけ購入出来てしまい、根本的な依存症対策にはならず、このコロナ禍において、ますます依存症を加速させてしまうものとなっています。
生活を立て直すにための生活保護申請にあたっても大きな壁があり、依存症対策に介入してくれる行政機関がほぼないという厳しい状況です。

ギャンブル依存症の実態把握と支援の充実を
昨年、神奈川県や横浜市が実施したギャンブル依存症対象者へのアンケートだけでは、依存症の実態を掴みきれないことから、まずは実際に地域でギャンブル行為に悩みを抱えている本人や、その家族に向けた相談会を開催するなど、実態に触れる取り組みが必要とのアドバイスがありました。

依存症から刑事事件に発展してしまう事例も多く、コロナ禍においても急増が予想されるものの、警察から予防対策への十分な協力は得られず、また、国や自治体から依存症支援支援団体への活動支援も不足している状況で、田中さんは、「支援活動そのものが育たない」と強い危機感を表明されました。
3年ごとに見直される「ギャンブル依存症対策基本法」に関する審議を注視し、法案そのものをしっかり育てていく視点が重要とのお話がありました

これまで自治体で実施している、学校でのギャンブル依存症の予防教育については、明確な効果を認めることはできず、中にはギャンブルを推奨するような文言が見られ、そのことに言及した田中さんの「そもそもギャンブルをやらないことに越したことはないのです!」というひと言に、一同大きくうなずきました。

000000653のサムネイル

令和3年度カジノ管理委員会予算。クリックで拡大します。

 

横浜市におけるカジノ・IR誘致の問題にも触れていただきました。
国の政府機関であるカジノ管理委員会では、2021年度の予算案41.5億円のうち、依存症対策の予算はゼロです。予算がつかなければ具体的な対策は進みません。

カジノ誘致を推進している横浜市や、ギャンブル等依存症対策推進計画の策定をめざす神奈川県における依存症対策事業やその予算についても、今後の予算審議の中でしっかりと確認していきたいと思います。ギャンブルなどの依存症は、当事者のみならず、その家族や周りの社会をも破壊しかねない、市民生活に直結する大変深刻な問題です。依存症の当事者のみならず、その家族への支援は急務です。

ネット・青葉では、コロナ禍におけるさまざまな現場の声に耳を傾け、必要な制度を提案していきます。

2021年1月13日(水曜日)まで、「神奈川県ギャンブル等依存症対策推進計画(仮称)」素案の意見募集が実施されています。こちらもぜひ、ご覧ください。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/nf5/pub/c1685707.html